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2025年3月19日水曜日

私が体験した「学校の怪談」

 # 概要

『学校の怪談: 口承文芸の展開と諸相』という本を読んでいる。教師という立場であった著者は身近な民間伝承ととれる学校の怪談を収集し、それを分析することを試みている。直接子どもたちから聞き取っているため話の生々しさが感じられ面白いのだが、そういえば自分もいくつか学校の怪談、あるいは身近なところでまことしやかに語られた怪談というものがあったことをいくつか思い出したので書こうと思う。もっとも、当時の記憶を忘れないために書くので怪談とは関係ない当時の描写を多めに記す。

# プレハブ校舎の花子さん

私のいた小学校は、いわゆる小学校然としたコンクリート製の白い直方体の小学校だった。当時(2003年ぐらい)の私にとってはだいぶ古い建物に感じられていて、ジメジメとした北側の廊下や階段にはトイレのような、なんとなくいたくない雰囲気が漂っていた。教室の廊下側の窓は木枠の古い昭和の窓で、鍵は木枠の重なる場所に開けられた穴に金属製のかんぬきを差し込む形式だった。とはいえそれは当時の私にとっての感覚であって、今思い出す限りでは築30年ぐらいで、そこまで古い建物ではなかったように思う。

しかし今の築30年と当時の築30年では建物の頑丈さは全く違うものだったのだろう。小学2年生の頃に授業参観かなにかで土曜日に保護者とともに登校した。午前中で授業が終わり、児童が全員帰ったあとに屋上部分のコンクリートが崩れ落ちた。北側の部分が落ちたらしく瓦礫などを見た記憶はないのだが、これをうけて急遽校舎の一部を建て替えることになった。

校舎は3つの校舎が一直線につながっているような構造になっていたのだが、中央部分の校舎だけが建て替えとなった。そのためあれよあれよという間に渡り廊下がグラウンドに作られ中央の校舎を通らずに両端の校舎へ移動できるようになり、また足りない教室を補うために体育館の南側にプレハブ校舎が建てられた。プレハブ校舎は教室が3、4室とトイレがあるだけの平屋で、校舎よりもずっときれいな建物だった。だがしばらくしてトイレの花子さんが出るという噂が立つようになったのは汚い校舎のトイレではなく、このプレハブ校舎のトイレだった。

プレハブ校舎に現れた花子さんは、女子トイレの奥から何番目の個室を何十回か叩いたうえで「は~な~こさん」と呼びかけると「は~あ~い」と返事をするという他愛のない、典型的なものであった。私は一度だけその花子さんを呼び出している姿を見たことがある。十人ぐらいの女子児童が集まって個室を叩きながら「きゅう、じゅう、じゅういち……」と数字を数え、「は~な~こさん」と声を掛けると「は~あ~い」という弱々しい声が、しかしはっきりと聞こえてきた。どこから聞こえてくるのか判然としないその声に、当時は本物かもしれないと思ったものだが、そこにいた女子児童の何名かが同時に声を出していたことが声に不思議な印象を与えていただけであろう。

花子さんの召喚は女子しかできないため当時の自分は歯がゆく思ったのをよく覚えている。あるいはまたそういう話が女子トイレにだけあることが羨ましくも感じられたため、私は何か出そうな薄暗い男子トイレに「花男さんがでる」と言ってクラスメイトを何名か連れてきて自分で考えた召喚方法を試して「は~あ~い」と呟くのをやっていたがこれはあまり流行らなかった。プレハブのトイレは南に面していた(廊下が北で、教室やトイレはすべて南側だった)のでかなり明るく、幽霊なんかがでなさそうな雰囲気だったのが逆に良かったのかもしれない。

# 夜中の神社の祟り

今度は打って変わって私が高校生の頃、2014年ごろの話である。ある日学年でわりと目立つ生徒の一人が学校を休んだ。聞けば事故にあったという。後日腕を骨折した姿でその生徒は登校してきた。どうも免許取り立ての先輩らを含めて合計4人(ぐらい)で車に乗ってドライブしていたところ事故にあったらしい。一緒に車に乗っていた先輩はもっとひどいという話だった。

しかしその生徒と親しい生徒が声を低くして噂するには、事故の直前に4人は夜中に神社に寄っていたという。先輩らは面白半分で神社に乗り込んでいき、腕を骨折した生徒は怖気づいたのか一番最後に神社に入っていたらしい。実はその神社に乗り込んだ順番が怪我の程度とおなじになっているというのである。すなわち無礼な先輩は一番重い罰を与えられ、逆に先輩にいわれていやいや入っていった生徒は一番軽い罰を与えられたというのである。

この話はこれ以上語られることはなかったが、神社も我々がよく知る町で何番目かに大きい神社で、木々で囲まれた暗い、どこか厳かな雰囲気のある神社だったため真実だと思わせるような迫力があった。思えばその神社の前を通ると背筋がゾクッとするとか、そういう噂があったような気もする。

# その他

いくつか思い出した話を箇条書きで綴っておく

  • 山の近くの墓地には幽霊が出るので、走って前を通った方が良いという話が小学生の間であった
  • 母親の幼馴染には多少霊感の類があるらしく、嫌なものを感じるため家の中で見ないと決めている場所があるという。
  • 私の母親は私が反抗期で感情的になることが多かったころ、勝手口が丑寅の方角、鬼門に面しているからではないかと思ったという
  • 私の実家の前にある家は長く空き家で、幽霊屋敷として家の近くで囁かれていたという。人がいないはずなのに2階のカーテンが動いたとか、女性がいたという話があったという。